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No.424 への返信フォームです。

チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  そういうわけで、クロウリーはカスタードクリームを作っていた。
カスタードクリームにしろパイ生地にしろ、指を鳴らせばあっという間に用意出来るのに、何故かクロウリーは人間のようにボウルを抱え、泡だて器を持っていた。黒い服を着たままなので、胸や袖に白い斑点が散っていた。
(エプロンをするべきだったか……)
いつだったかアジラフェルがしていたのを見たことがあった。古書店の整理をしているところにアナセマが訪ねて来て、そういう時にはこういうものをするものだと、後日アダム達から連名でプレゼントされたのだと言っていた。もちろんその中には、『おそろいです。一緒に使ってね』というありがたいメッセージつきで、クロウリーの分も入っていた。そういえばアレは、どこへしまったのだろうか?
そう考えながらもクロウリーの手は動き続け、時々は出来具合を確認し、味見もしてみた。あまりよく分からなかったが。



なかなか書けないのですが、バレンタインまでにとか思っていたので背水のなんとかでのっけてみます。
明後日までに出来ますように!初心者なので、おかしなところがありましたら、教えていただけると幸いです。
..2020/02/12(水) 18:15  No.424
 
Re:チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  「花を見ている男性が多いと思ったら、今日はバレンタインディなんだね」
クロウリーにはアジラフェルの言っている言葉の意味が分からなかった。
「……なんだそれは?」
「知らないの!?」
悪魔なのに!?と心底驚かれたが、知らないものは知らなかった。正直に聞いたのだから、教えて欲しかった。
「バレンタインディだよ……元は違うけど、現代では好意を持っている人に花やチョコレートをプレゼントする……本当に、知らない、ん、だよね?」
アジラフェルは天使らしく確認してきた。騙すのが生業の悪魔だからと警戒するのっ無理はない。何しろ混じり気なしの天使なのだから。
確かちょっと前に、バレンタインがらみで何かあったと記憶しているが、それがどうして好意を持つ者同士がどうとかいう話になっているのかについては、皆目見当がつかなかった。
「そういう日があるんだ。互いの好意を、贈り物によって確認し合う日だね」
「バースディやクリスマスや記念日じゃ飽き足らないってのか?」
「うーん、そうとも言えるかもしれないねぇ」
苦笑いしながらアジラフェルは言った。



やっぱりバレンタインまでは無理でした。
書き始める時は、たいてい行けそうな気がするんですけどねぇ(笑)。
..2020/02/14(金) 18:11  No.425
 
Re:チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  「物質主義の人間の考えそうなこったが、なんだってチョコレートなんだ?」
クロウリーは至極もっとも疑問を、いつものベンチの隣に座るアジラフェルに投げかけた。どうやら『このことに関しては、食がらみの為か、相手の方が詳しそうだったので。
「うーん、どうしてだろうねぇ。もとは高級品だから? それとも……」
手の中のアイスクリームに視線を当て、アジラフェルは言い淀んだ。
「どうした?」
アイスクリームが溶けちまうぞとクロウリーが指摘してもアジラフェルは黙ったままだった。クロウリーは仕方なくアジラフェルのアイスクリームを補強し、ついでにどちらにしようか悩んでいたストロベリーのアイスクリームを、バニラの上に追加しておいた。バレンタインディのレクチャーに対する、ちょっとしたお返しとして。
アジラフェルはちらりとクロウリーを見やった。
クロウリーはピンと来た。
ちょっと眠そうな目を瞬かせているアジラフェルというのは、自分の口からは言いにくいので、クロウリーが助け舟を出してくれないだろうかと期待している時だった。
そこまでは分かったが、生憎と何をしてほしいかが分からない。
バレンタインディとやらはどうも、クロウリーの手に余る代物のようだった。


バレンタインが終わってしまったので、かえって気楽に書けるような?
最後までちゃんと、書けるとよいのですが。
..2020/02/16(日) 17:39  No.426
 
Re:チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  アジラフェルの考えはこうだった。
チョコレートといえば代表的なスイーツだ。そして、恋人のことをあまくとろけるような存在という意味で、スイートとかスイーティとか呼びかけることがあるのも知っていた。誰かをそんな風に、呼んだことはなかったが。
それにかけているんじゃないかと推察されるが、それをクローリーに告げるのははばかられた。どうしてそう判断したのかについては、まったく明文化出来なかったが。
だからアジラフェルは違うことを口にした。
「チョコレートと言えば」
アジラフェルが話をそらしたがっていることは、クロウリーでなくとも分かった。
いつもならそのままにはしあいクロウリーだったが、今日は乗った。何をどう追求すればいいのか、分からなかったからだった。
「以前食べたチョコレートパイはおいしかったね」
「ああ、あの店のか?」
アジラフェルは頷いた。
「あれほどおいしいチョコレートは、他にはないよ。店がなくなってしまって、残念だった……」
「空襲に合っちゃな」
「カスタードも絶品だった」
「そうだったな」
よく土産にしていたクロウリーは、アジラフェルよりもその店のことを知っていた。後を継ぐんだと言っていた息子のことも、その幼馴染みの少女も、気のいい主人夫婦のことも。悪魔は記憶力がいいのだ。
「また食べられたらなぁ」
アジラフェルは笑みを浮かべてそう言った。
..2020/02/20(木) 18:07  No.427
 
Re:チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  そんな訳で、クロウリーはせっせとカスタードクリームを作っているのだった。
アジラフェルが好きだと言った、あの店の味を再現するために。
アジラフェルはおいしいものを食べるのが好きだ。おいしいものはともかく、おいしい店はすぐに姿を消してしまう。彼らよりも長く生きていく作り手がいないからだった。
スシはある、牡蠣もある、クレープだってあった。だがそれを作っていた人間はもういない。同じものを作っても、同じ味にはならなかった。
クロウリーもアジラフェルにつきあって飲んだり食べたりはしていたが、正直食べ物の味についてはよく分からなかった。温かいとか味が濃いとかそういったことは分かったが、今食べているものがおいしくて、また食べたいとはさほど思わない。飲み物も、嫌いではないが、二度との飲めなくても別に、困ることも悲しむこともない。けれど、おいしいと言って食べるアジラフェルを見るのは好きだった。
(こんなもんか?)
クロウリーは泡だて器の手応えで出来具合を判断した。
味見はしない。してもどうせよく分からない。アジラフェルがおいしいと判断するかどうかだけが気になった。こればかりは、食べさせてみないことには始まらない。一応作り方を見て、テレビやネットでも確認したが、誰が味見をしても意味がない。
(さて、オーブンを温めるとするか)
甘い匂いは、耐え難いくらいになっていた。
..2020/02/25(火) 17:58  No.428
 
Re:チョコレートとバレンタイン  ..みずほ 

  「すごくおいしいよ、クロウリー!」
アジラフェルはクロウリーが再現したカスタードパイと、ついでに作ってみたチョコレ―トパイを喜んでくれた。何も言わないで差し出したが、店で買ったような箱に入っていたらから、クロウリー作とは気付かないようだった。
どこの店のものだとか、今度連れて行って欲しいとか言われたらどうしたものかと算段しながら飲むコーヒーは格別の味だった。
「懐かしいなぁ。あの店の味によく似てるよ」
「そりゃ良かった」
本当に良かった。そのために、何度も味見をしたのだから。
記憶はしていた。いつのだって、どんなことだって。だがその再現となると話は違う。美味い不味いに重きを置かないクローリーにとって、あのほんわかした味を再現するのはかなり難しかった。今はもうない店の、繁盛していた頃の味を。
奇跡でそれを再現出来るとは思わなかった。
「思い出すなぁ」
アジラフェルのカップが空になったのに気付いたクローリーは、席を立たなくてもおかわりできるよう、ポットにたっぷり入れて、しっかりしたティーコゼーを被せておいたお茶を注いだ。
「何をだ?」
他にも食べたい店があったのかと思ってクローリーが聞くと、アジラフェルは幸福そうに笑って言った。
「意中の相手とあの店のチョコレートパイを食べると恋が叶うって言われてたんだよ」
知ってたかい、クローリー? と尋ねるアジラフェルの笑顔に、他意などないと信じたい。コーヒーを噴きそうになったクローリーは、心からそう思った。



なんとかホワイトデーに終わりました!!やった!
なんと今年は雪のホワイトデーになっておりますが、恋人たちには関係ないか。
終わり方としてどうかとか、この話面白いのだろうかとか、脂汗垂らしそうな疑問は多々ありますが、なんとかエンドマークを付けることが出来てホッとしております。読んでくださった方、ありがとうございます!!
..2020/03/14(土) 18:18  No.429



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