2008/11/7(金)
りはびりー No.224 |
本の世界が、知らない間に遠くなっていた。
多くの人に触れられ、本来よりも柔らかくなった紙を指でたどる。 長い間蛍光灯にさらされたせいで色も褪せ、ところどころ折れ後も残っている。 それでも、図書館の本が好きだった。 多くの人に読まれ、愛されてきた歴史を感じさせてくれる。 うっすらと入った鉛筆書きに小さく苦笑を零しながら、活字に目を滑らすが、
「……だめ、かぁ」
情報が何も伝わらない。頭が、くらくらする。 文字が踊り、艶やかに笑う。連なる流れはとめどもなく、意味の区切りもわからない。 気持ち、悪い。 三行も読まずに本を閉じて、本棚にもたれかかる。 ゆっくりと息を吸えば、冷たい空気が肺を満たしてくれる。
(もう、読めないのかな)
長く苦しかった闘病生活の、後遺症。 感情を司る脳に入った未知のウィルス。 治療法もわからなかった。 だから、生きていること自体が奇跡だったのだとおもう 試行錯誤の末の結果がこれなのだから、文句はいってはいけないのだとぼんやりと思う。
(長い文章を理解する能力が、障害されてる可能性があります)
申し訳なさそうに瞳を伏せて、小さく教えてくれた人の顔が目に浮かぶ。 大人のくせに、泣き出しそうな顔をして謝るものだから 涙は逆に乾いてしまった。
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